SOI Asia は2021年よりインターネット人材育成APIE (Asia Pacific Internet Engineer) プログラムをアジア各国のパートナー大学に提供していますが、このたび、その一部が、日越大学 (VJU:Vietnam-Japan University) において正規授業の教材として採用されました。
日越大学では、2024年10月よりコンピュータサイエンス&エンジニアリング(BCSE)プログラムの学部3年生(43名)が履修する必修科目「コンピュータネットワークと通信」(担当者:クアン・チュン・ルー講師)において、APIEプログラムに含まれるオンラインコース「Understanding the Internet」と「Operating the Internet」が使用されています。これらのコースを修了した学生は、日越大学の単位だけでなく、SOI Asiaが発行するOpen Badges準拠のデジタルバッジも獲得できます。デジタルバッジは、INXIGNIA で発行され、SOI Asiaの各種プログラムへの応募時に添付したり、LinkedInなどのビジネスSNS上でスキルや学習履歴の証明に活用できます。
APIEプログラムは通常年に2回学生を募集しており、以下のようなコンポーネントで構成されています。
- APIE Online:慶應義塾大学が FutureLearn 上で公開している以下2つのオンラインコースを、自分のペースで学びます。
- コース#1 “Understanding the Internet” (4週間)
- コース#2 “Operating the Internet”(5週間)
- APIE e-Workshop:全6回・隔週土曜日にZoomで実施するセミナーとハンズオンセッションで、オンラインコースを学びながら学習のふりかえりとコミュニティ構築を行います。
- APIE Camp:APIE OnlineとAPIE e-Workshopの修了者が参加できる合宿形式で実施する5日間のプログラムで、アジアの大学で開催され、慶應を含む複数のアジアの大学から約20人〜25人が集まって共に学びます。
- APIE Advanced Camp:APIE Campを修了した学生が参加できる合宿形式で実施する5日間のプログラム。主に日本で開催され、慶應を含む複数のアジアの大学から約20人〜25人が集まって共に学びます。
現在までにAPIEプログラムには、アジア10各国18大学から1400人以上の学生が登録し1000個以上のデジタルバッジ(修了証)が発行されています。また APIE Onlineで提供されている “Understanding the Internet” コースは世界にも一般公開されており、99カ国から約1200人に受講されています。
今回 APIE Onlineを正規授業で学習した日越大学学生は、授業期間終了後に上記の「APIE e-Workshop」に参加して学習を継続することで、その後に続く「APIE Camp」「APIE Advanced Camp」などの対面を含む他のコースへの参加資格を取得できます。これらのAPIEでの継続的学習は日越大学では課外活動としての位置づけですが、直接的なスキルや知識の習得だけでなくインドネシア、マレーシア、フィリピン等のSOI Asiaパートナー大学から参加する他国の学生や、インターネット業界に身を置く研究者や現役のネットワークエンジニアとの交流による人的ネットワークも構築され、将来のキャリアパスについて考える機会となることが期待されています。
SOI Asiaは、2001年に慶應義塾大学を中心として開始された大学間教育研究協力のプラットフォームであり、2024年現在では29の大学や研究機関が参加しています。APIEプログラムは、次世代のインターネットを支える人材の育成を目的に、2021年よりAPNIC Foundationの支援のもと、WIDEプロジェクト、AITAC(高度ITアーキテクト育成協議会)といったパートナー組織とのコラボレーションによりSOI Asiaの一環として活動を開始しました。今日、インターネット基盤技術の開発やネットワークの運用は、スマートフォンアプリや生成AI、ブロックチェーン、量子コンピュータといった新技術に比べて若手エンジニアから注目を浴びにくくなっています。その一方で、世界のインターネットの普及率はおよそ7割1で、世界人口の3割はいまだインターネットアクセスがない状況にあり、より多くのインターネット分野のエンジニアが必要とされています。APIEプログラムでは、次世代を支える大学生に、インターネットの歴史や設計思想から実践的なスキル、そして将来に向けたキャリアパスのデザインまでをカバーしアジア太平洋地域を中心にインターネット分野の未来を支える研究、運用を担う人材の輩出を目指しています。
日越大学は、日本・ベトナム両政府の主導で、次世代のリーダーや専門家の育成、持続可能な発展、日越間の知識移転を目指し、2014年7月にベトナム国家大学ハノイ校の7番目のメンバー大学として設立されました。日越大学は、「リベラルアーツ」と「サステナビリティサイエンス」を教育の理念とし、現在、学際社会科学と先端工学技術を中心に幅広い学問分野を提供しています。具体的には、8つの大学院修士プログラム(地域研究、企業管理、公共政策、グローバル・リーダーシップ、ナノテクノロジー、社会基盤、環境工学、気候変動・開発)と、6つの学部プログラム(日本学、コンピュータサイエンス&エンジニアリング、シビルエンジニアリング、スマート農業とサステイナビリティ、食品工学と健康、メカトロニクスと日本型ものづくり)を提供しています。2024年現在、学生数は約1000名に達し、ベトナム国内外で活躍する人材を育成する中規模総合大学として着実に成長を続けています。
[1] https://www.itu.int/itu-d/reports/statistics/facts-figures-2023/