■ 概要SOI(School on Internet) Asia プロジェクトは、インターネット基盤を使っ て、アジア諸国の高等教育に貢献することを目標としている。現在、衛星を利 用したインターネットを使うことにより、物理的に高速なケーブルの引きにく いアジア諸国の島々にも、短期間に比較的広帯域なインターネット基盤が構築 可能となっている。本プロジェクトで構築した遠隔高等教育環境を利用するこ とで、アジア地域でのリアルタイム講義やアーカイブ講義の共有、その他の様々 な教育プログラムが実施できる。 本プロジェクトでは、2007 年 9月現在、アジア13カ国27箇所の大学や研究機 関(表1、図1)をパートナー組織として衛星の受信専用局を設置しており、日 本やアメリカ等、インターネット環境の整備された場所から各パートナー大学 に対してリアルタイム授業の配信を行い、SOIに蓄積されたアーカイブ講義の 共有を行っている。 表1. パートナー組織一覧
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このプロジェクトは日本政府の各省庁のサポートを受け、WIDE Project・AI3
(Asian Internet Interconnection Initiatives) Project、慶應義塾大学、
Asia-SEED Institute等が中心となって運営しています。授業提供のオフィシャ
ルパートナーは東京海洋大学、東北大学農学部、北陸先端科学技術大学院大学、
慶應義塾大学、WIDE Projectなど。
![]() 図1. アジアに広がるパートナー ■ ネットワーク構成SOI ASIAプロジェクトでは、比較的安価で短期間にパートナーサイトにおけ るインターネット基盤を構築し、効果的な遠隔高等教育環境を提案するため、 それぞれのサイトを講師サイト、学生サイト、中継サイトに分けて設計した。 講師サイトは中継サイトまで講義の映像・音声を配信するために十分なネッ トワーク帯域が存在すれば場所の制限はなしに構築可能である。 中継サイトは、講師サイトとの安定した接続性を提供できるよう、日本のイ ンターネットバックボーンに近く、アジアの衛星サイトへ安定したマルチキャ スト通信を提供しやすいという点から、C-band衛星アンテナでアジアとの衛星 インターネット通信基盤を保持する慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスに構築し た。 一方、学生サイトは受信専用の衛星アンテナを設置し、 UDLR(Uni-Directional Link Routing, RFC3077)技術を利用して構築した。こ れにより、中継サイトからパートナーサイトへは AI3 (Asian Internet Interconnection Initiative)プロジェクトの13Mbpsのダウンリンクを利用し、 パートナーサイトからの戻りのネットワークは各組織に既存のインターネット 基盤を利用するという、リンクの非対称なインターネット基盤の構築が可能と なった。この環境を利用し、リアルタイム授業において安定した品質で講師サ イトから講義の映像・音声を配信し、学生サイトからは各サイトのインターネッ ト環境に最適なアプリケーションを利用したフィードバックが可能となった。 また、各パートナーサイトに設置したミラーサーバを参照することで、遠く のサーバに接続するストレスを感じることなくアーカイブ講義を参照できる環 境の構築を行った。全体の構成を図2に示す。![]() 図2. SOI Asiaネットワーク全体構成 ■ アプリケーション構成アプリケーション構成は、アジアにおける複数組織に同時に講義を配信可能 であること、インターネットの接続性が存在しない場所にも講義を配信可能で あること、各組織のネットワーク帯域に合わせたインタラクティブセッション が可能であることの3点を考慮して決定した。 これにより、講師サイトと中継サイトはDVTS (Digital Video Transport System, RFC3189) もしくはビデオ会議システムであるPolycomを利用して接続 し、中継サイトから学生サイトにはWindows Media Player もしくは VIC(VIdeo Conference Tool)・RAT (Robust Audio Tool) を利用して講義を配 信することとした。また、学生サイトからのフィードバックには VIC・RATの 他、Netmeeting、Internet Relay Chat、掲示板、MSN Messenger等各組織のネッ トワーク環境に最適化されたアプリケーションを利用してフィードバックを返 せるよう設計した。■ 人材育成プログラム本プロジェクトでは、各組織のスタッフがプロジェクトのネットワークと機 構をよく理解し、十分な知識を持って維持管理できることが講義の円滑な運営 とプロジェクトの継続的な発展にとって欠かせない要素であると考える。この ため、2002年より毎年1回本プロジェクトの基礎的、発展的な知識を強化する ためのワークショップを開催し、毎回30名程度のSOI Asiaオペレーターに向け た、人材トレーニングを行っている。■ 大学間協調とカリキュラム構築本プロジェクトでは、全パートナー大学の代表で構成される、ステアリングコ ミッティ、アカデミックコミッティ、オペレータコミッティが運営を行ってい る。アカデミックコミッティでは、各大学の希望を集約して毎年のコースカリ キュラムを決定する。特に、2005年度では、アジアで希望の多い、海洋関係、 バイオ関係、IT関係のコースを実施しており、それぞれの大学で単位となるよ うな仕組みを構築するため、ファカルティ同士のコミュニケーション方法、学 生の評価方法などを検討している。ステアリングコミッティでは、新サイトに ついての承認プロセスを確立するなど、協力大学の有機的な結び付きが構築さ れている。■ これまでの実績本プロジェクトにより、既に12カ国22箇所のパートナー組織において比較的 安価で短期間にインターネット基盤の構築がなされた。特にミャンマー連邦に おいては、2001年10月当時には全国いずれの大学にもインターネット基盤が用 意されておらず、インターネットの商用化もされていなかったが、ヤンゴンコ ンピュータ大学にインターネット回線を引き込み、政府のインターネット利用 制限の緩和を特別に得、学生サイトとしての環境が整備されたことは非常に画 期的であった。 本プロジェクトの遠隔高等教育を利用して、2006年10月現在までに16のコース 授業を含む150の授業が行われた。これらの講義の中にはインターネット関連だ けではなく、パートナーサイトからの要求に応じて行った東京海洋大学からの 海洋工学に関する講義や東北大学からの農学に関する講義も含まれており、 SOIでこれまで経験し、蓄積してきたインターネット関連以外の講義への本環 境の適用の可能性が確認された。 また、講義を聞き、受講者が課題を出し、講師が評価するというキャッチボー ルによって講義を運営するという方式は、講義の内容がフィットした大学に対 しては十分に機能した。学生は興味のある分野を研究する講師の特定ができ、 講師は学生の能力評価を行えた。本プロジェクトで用いた遠隔講義の手法は、 Co-Advisorの選定、共同研究のパートナーからの講義といった様々な教育プロ グラムに使えることがわかった。■ まとめ今後は、各パートナー大学における単位互換を目指した講義シリーズを複数 行い、本遠隔環境が実際の大学講義基盤として利用可能かを検証していく予定 である。また、本環境を講義だけではなく、留学プログラムやツイニングプロ グラムへ適用し、より効果的な教育プログラムの提案を行う。■ 連絡先一覧本プロジェクトへのお問い合わせ : soi-asia@soi.wide.ad.jpプロジェクトホームページ: http://www.soi.wide.ad.jp/soi-asia/ 慶應義塾大学 : http://www.keio.ac.jp/ Asia-SEED Institute : http://www.asiaseed.org/ WIDE Project : http://www.wide.ad.jp/ AI3 Project : http://www.ai3.net/ |